診断士コラム

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製造業DXの実現にローコード開発は有用?

2023年が始まりました。昨年はCOVID-19に加えて、世の中でこれまで起きなかったような大きな出来事が立て続けに起こり、会社を経営している立場として、また、家族を持つ親として色々と考えさせられる1年となりました。

何か考えるヒントになればと思い、年末年始に読む本を探すために大型書店に行きました。ITビジネス関連はDX関連の書籍で埋め尽くされていました。色々と眺めていると、日本流に特化したDXや、戦記物など教科書的な物以外にバリエーションが随分と増えたと感じます。2022年後半に出版された製造業DXに関連するものを数冊購入して早速読んでみました。

そこで、今回のコラムではローコード開発はDX領域(特に製造業向け)で活用する事が出来るのか?どう実現するのか?という事について考えます。結論から申し上げると、私自身はベストマッチと言って良い位に相性良く活用できると考えています。

私自身は20年以上に渡り、製造業向けの業務システム、主に生産管理システムの企画・設計・開発や、工場生産スケジュールの立ち上げ・導入、管理会計原価のコンセプト構築・開発などを専門領域として遂行してきました。これらの経験から業務システムをより良く開発できるようにという目的で2014年にローコード開発ツール「TALON(タロン)」という製品を仲間と開発し、メーカとして起業しました。以降ツールの営業活動と、製造業向けのコンサルティング業務を行っています。

起業前から強く思い続けている事は、「より良いシステムはお客様自身が深く参加して作らないと出来ない」という事です。もちろん企業自身で全てのシステムを開発するのは難しい事が多いですから、多くの場合はソフトウエア企業と一緒に作る形になります。その場合も丸投げではなく、共創という関係で作っていくべきです。あまり多くは書きませんが「人月ビジネス」という言葉に代表されるビジネスモデルでは、この共創という開発が難しいです。そこで、お客様自身でも開発に参加できるような仕組みが必要と感じ、ローコード開発ツールを作りました。

今回読んだ数冊の本を読み進めて、私が10年以上に渡って主張し続けて来たことがDXを実現する為の必須要件になっていると感じました。これまでアナログで行ってきた業務を単純にデジタル化するというだけではDXは上手くいきません。単にデジタルデータが増えていくだけでは、価値向上に寄与しないからです。必ず、「何をデジタル化・ソフトウェア化するのか?」「デジタル化した情報をどのように活用するのか?」という判断が必要です。その為には相当量の試行錯誤が必要になります。実際に作ってみて確認して、また作ってみてというPDCAが必須になります。これはやはりシステム会社に丸投げでは出来ません。

例えば私の専門領域の一つに工場の管理会計原価の構築があります。制度会計原価とは異なり、どのような要素の切り口で個々の製品やプロジェクトに原価積み上げするのが最適かは各工場などによって異なります。理想は現実のあらゆる要素をデジタル化して、その情報を直課・配賦するという物ですが、実際にそれは不可能ですので、現実的に何を収集出来て、その情報をどう活用すればより良い(現実に近い)原価になるのかを試行錯誤する必要があります。昨今の様々なセンシング情報やデバイスにより色々な情報(例えば人の動きや設備の稼働状況)をデジタル化する事が出来るようになってきました。
それらの様々な情報をどのように組み合わせて、加工するかがキモになります。通常、このようなシステムを構築する場合、(1)センシング情報や生産管理システムの情報を用意、(2)(1)のデータを纏める為にETLツールなどを利用、(3)データを加工する為のプログラムが必要、(4)自動で集まらない情報を入力する為の入力インターフェースが必要、(5)集計・分析・表示する為にBIツールなどを利用、というように様々なツールや仕組みを用意して組み合わせて開発する必要があります。

上記の開発で、ローコード開発は大きな武器になります。昨今の多くの業務システム向けローコード開発ツールはリレーショナルデータベース以外の例えばビックデータを扱うNoSQLや各社のクラウドサービスのデータなどを扱うことが出来るようになっています。また、データが存在すればそれをすぐにビジュアルな形で表現するユーザインターフェース機能も備えていますし、様々な加工処理やデータ入力機能も当然すぐに作れます。(2)~(5)について全て賄うことが出来る上、お客様自身で簡単かつ素早く試行錯誤する事が可能ですし、プロトタイプ開発とは異なり、そのまま運用してしまう事も出来ます。

これらの点からローコード開発はDX(私の専門が製造業向けなので少なくとも製造業務向けについては)を実現する際の非常に有効な武器になると考えています。

文責 株式会社HOIPOI 代表取締役 古関雄介

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