診断士コラム

診断士コラム

超高速開発でSIビジネス改革を(1)

前回からかなり期間が空いてしまいました。 新年1回目のコラム更新です。今回は、ポストSIビジネスとしての超高速開発というテーマで書いてみたいと思います。 2017年2月14日に、ソフトウェア事業協同組合(SBA)が主催するポストビジネスセミナに登壇して、約1時間ほど当テーマについてのお話と、TALONのデモをご覧いただく予定となっています。

このようなテーマ(ポストSIビジネス )でお話しするため、これまで色々と考えてきた、SI業界に対してどのように超高速開発ツールであるTALONが役に立つことが出来るのかを整理してみました。

SIビジネスを行っている方にTALONをご紹介して、販売パートナーとして協業を検討頂く際に言われる一番多い言葉は以下になります。

「これ、ウチ(SIベンダ/ソフトウェア開発企業)のビジネスを無くすツールですよね?」

これはこの数年間で相当の数言われています。

TALONでのデモをご覧になると、確かに通常のWebシステム開発で1機能を構築するのに2~3日掛かるような機能が、それほどTALONの操作になれていない方でも1時間掛からない位で完成します。

現在の人月見積もりをしている世界でTALONを導入してしまったら売上が相当減ってしまうし、大勢の開発作業を行う社員がいる場合、食い扶持そのものが減ってしまうという危機感を感じるのは当然だと思います。

私はこの話は真逆なのだと本気で考えています。それどころか超高速開発がSIビジネスを再興する存在になると確信しています。

何故なら、本来の価値に見合ったビジネスになるからです。この内容をご説明するために、まずは私自身の経験とTALONを開発した動機を少し記します。

TALONを開発するに至った動機

ちょっと横道にそれてしまいますが、最初に私自身の経験の話をします。

私は元々SIビジネスの業界に15年間属していました。

主に製造業務向けの基幹システム開発の領域でスクラッチ開発ベース、パッケージベースの両方でマネジメント、設計、開発、運用サポートを行っていました。

強烈に感じたのは、このビジネスは利用企業にとって価値のある部分で利益が出ているのではなく価値の低い部分で利益が出ている事への違和感でした。

まさに人月ビジネスと揶揄される部分で、とにかく開発工数を多く出し、人を大量に投入することで利潤を出します。ここで規定される人月工数は結構リスクを見た費用なのでデスマーチプロジェクトにならない限り、仕様が膨らめば膨らむほど開発側は利益が増大します。

この構造を変えることが出来ないかと考えて、TALONの開発・販売を開始しました。

現在の企業向け業務システム開発(特に基幹業務のような規模が大きい物)は、利用企業が欲しいシステムを規定(RFP)し、それに対してシステム開発会社が提案し、通れば基本設計・概要設計・詳細設計・開発・テスト・保守などと一般的には進みます。

この中で高いスキル・経験が求められるのは基本設計での構想構築とシステムのデータモデリングを行う概要設計になります。(所謂上流工程。もちろん開発などの下流工程も難易度の高い機能については高いスキル・経験が求められますがそれらは全体のごく一部になります)

現在の構造は基本設計・概要設計よりも開発の方が多くの工数が算出されて費用が大きくなります。これはある意味で仕方がない部分があります。

例えばスクラッチ開発であればすべてをこのプロジェクトの為に作りますので非常に時間が掛かります。パッケージ導入であっても、特に製造業向けの生産管理システムなどはカスタマイズが非常に多くなる傾向があり、元々そのまま使うことを前提としている製品をカスタマイズするので整合性を取ったり検証なども含めて非常に手間がかかってしまいます。

10年以上この仕事をしていて感じるのは、上流工程は各ニーズに合わせた価値提供を行う必要があるので省人化が難しいけれども、下流工程の大部分は人海戦術で行われており、省人化が可能だということです。

何故なら個人向けのアプリケーションではなく、企業が企業内で利用する業務システムは構造にパターンがあるからです。リレーショナルデータベースを用いて、データを蓄積・閲覧・利用していくというのが典型的な利用法で、蓄積にはWebなどの入力画面が使われて、閲覧・利用には帳票やWeb画面が使われます。

この、業務利用のためにデータベースを入出力する仕組みを汎用的に用意しておき、およそ必要な機能(例えば生産管理ステムであれば部品表を表示するために構成レベルでドリルダウン式で折りたたみ出来る機能など)を設定だけで作れるようにしておけば人海戦術は必要なく、少人数で開発してしまうことが可能です。データベース設計と業務要件さえ出来てしまえば即座にシステムは完成する、それを実現するために作ったのがTALONです。

さらに、上流工程も現在展開を進めているセミパッケージ(テンプレートモデル)を使うことで省人化、高速化、精度向上が可能です。このセミパッケージがSIビジネスを復興すると私は考えています。

超高速開発がSIビジネスを再興する

ようやく本題に戻ります。

先に残念なお話になってしまいますが、SIビジネスの再興は実現しても、現在の資源構成のままではありません。現在の人月ビジネスとは変わりますので、大量の開発要員を投入してという事が出来ない以上、一般的なレベルのプログラムスキルを持つ人はやはり別の役割になる必要があります。(逆にスーパープログラマ・アーキテクトといった人たちの価値は今後どんどん高くなっていくでしょう)

私が考える超高速開発をSIビジネスに適用するパターンとして3つあります。

  1. システム開発を超高速開発ツール(TALON)で行う。
  2. セミパッケージを作り、パッケージ製品とスクラッチ開発の中間的なシステム開発を行う。
  3. (やや小規模開発向け)顧客要望を受けて、即座にプロトタイプを作り、そのプロトタイプを用いて提案する事で受注につなげる。

3つめはやや特殊ですが、一番価値提供出来る仕組みだと考えています。

1.システム開発を超高速開発ツールで行う。

まず、一番単純な発想は現在の基幹システム開発の受託を超高速開発ツール(TALON)ベースで実施するケースです。これはスクラッチ開発の部分をTALONに置き換えるだけです。開発工数は1/10以下になります。ただし、大きな問題は顧客への費用提示です。顧客は掛かる工数が1/10になるのであれば費用だって1/10にならないとおかしいという感情を持っています。これまで人月ビジネスで仕事をしているので当然です。

ここについては、同じものであれば高速で完成して、早く使えればその分の価値もあるという事を理解頂いた上で、通常のスクラッチ開発での費用感とも比較をさせて、スクラッチ開発よりもやや安い金額を提示することでご理解頂くケースが多いです。

また、TALONの販売パートナー様からは、ツールだけで売っておしまいだと思っていたら最初に作るの為の社内工数が無いから構築してほしいという話が意外なほど多いという声を頂いています。

ただ、本当にSIビジネスの復興に使えるのは2と3だと私は考えています。

あまりにも長くなってきてしまったので続きは次回更新します。

それでは今回はこの辺で。

文=古関 雄介

検索

アーカイブ


PICK UP

お問い合わせ